かくれが

とあるスマオタの備忘録

TEAM NACS 第16回公演「PARAMUSHIR〜信じ続けた士魂の旗を掲げて」初日

2/3 森ノ宮ピロティホール

3年ぶり、わたしにとって4度目の TEAM NACS 本公演です。が、初日取れなくて取れなくてですね……わたしはとにかくナックスの初日が観たいんですけども、取れんかったなあ。で、当日券です。絶対に取るという気迫で、周囲にも行くと話してその予定で動いてたら、電話予約10分で取れたので、チケットはやはり気合だと、より深く思い至った次第。前売りの頃はまだ元気がなかったんだ。布団の中から当日券取って、ざざっと荷物を詰め、その日ちょうど銀座でハナタレナックスの宣伝にonちゃんが来てたので寄り、東京駅から新幹線に乗って、車中で駅弁食べて、ふと「わたし、生きてる!」という実感が漲った。むちゃくちゃ久しぶりだ、この感じ。しかし、チケット持ってないとこからの当日弾丸遠征でしか、自分の生の実感がないのもよくないと思う。まあとりあえず生きててよかった。

1945年8月15日。
この日、日本は無条件降伏を受け入れた。
しかしその後。
突如としてソ連軍の大部隊が、
武装解除した孤島に攻め入ってきた!
気持ちをもう一度奮い立たせ、再び銃を持つ兵士たち。
彼らが立ち上がらなければ、北海道は二分されていたかも知れない。
日本最後の戦いの司令部があった「幌筵島」。
私たちはまだ、その島の名前さえ知らない。

森崎さんが、タイトルになってる島の名前すら知らないで観て欲しいみたいなことを、たしかラジオでおっしゃってたので、フライヤーや公式サイトに記載のこのあらすじだけを入れて挑みました。読み方も知らないでいてほしいそうなので、知らないを貫いています。よって、「本公演」とだけ呼称している。わたしべつに、提供側が言うとおりに観なきゃいけないとは思わないんですけど、リーダーがそうしろって言うんなら、そうするので、あの人、なんかそういう天才だと思う……リーダーの言うことなら聞く……。そして、結果として、なるべく白紙で挑んでよかったなあ、と思っています。

以下、ネタバレに配慮のない、しかし未見で内容が知りたいひとにも配慮のない感想。
思ってたよりはるかにおもしろかった……おもしろくないと思ってたわけでもないんですけど、むちゃくちゃおもしろかったな……。なんかすげえ強い作品だった。殴ってくる力が強い。

端的に言うと、森崎博之すげえなあ。こう、集大成っぽさある。この10年の。わたしが知ってる10年のチームナックス。ちょうど、このへんをちょろちょろし始めて、今年で10年になる。去年のXXみたいなファンイベントでは、「わたしはやはり外様だなあ」と、ファンの人たちと自分は違うんだという思いを抱き、本公演のたびに「すぐに飽きるかもしれないから」「はじめて熱烈に好きになれるかもしれない劇団*1」「いやまあ好きなんだろうよwww*2」と言い続けたわたしですけども、「もしかしてすごくファンなのではないだろうか……」と思った。

むちゃくちゃ誤解されそうな話を書く。すぐに飽きるのではないかと危惧しつつ、おそるおそる下荒井のチケットを取っていたころのことです。最初にLOOSERとCOMPOSERのDVDを貸してくれて、HONORのチケ取りを手伝ってくれて(結果的に取れなかった)、その後ある日突然むちゃくちゃ安田さんが好きになったわたしに、当然、下荒井もいろいろと世話してくれた友達が、「次の本公演は洋さんの作演出だから、その次のリーダーの本公演までは、生で観るくらい、好きでいて欲しいなあ」と、言ってくれたのが、ものすごく印象に残っている。が、それから9年間、森崎作品を観た!という気持ちになったの、2011年の5Dとして上演した、LOOSER6だけだったんですよね。その直後の2012年WARRIORも森崎演出なんですけども、いや演出の持ち味は好きなんですが、どうにもカチッとはまんなかったというか。いや、おもしろかったんだけど、なんて言えばいいんだろうなあ。で、わたしは、もう、NACSの森崎作品は、そんなにぐっとくることはないのかな、という諦めが、多少できてたんだと思う。NACS以外の演出やってほしいってずっと言ってたくらい。そのせいで「思ってたよりはるかにおもしろかった」という感慨に陥ったんじゃないかなあ。森崎博之最高傑作と名高いおなーのあと、森崎さんとナックスがまわり道をはじめた下荒井からの10年弱の道のり、みたいな認識が漠然とある。あることに気づいたのも、今作観てからですけど。

しかし、今作。わたしの、おなーの五作さんに対する心残りとか、うぉりゃでうまくいってないと感じたとこが解消されてるみたいな、森崎作品という意味でのチームナックスの物語の伏線回収っぽさがすごい。まわり道って言ったけど、その道ぜんぜん無駄じゃない。下荒井もうぉりゃも悪童も生きてる。この10年の先に、このど直球の芝居をやれる森崎博之……好き……。なんのてらいもなかったわ、まっすぐに、ちゃんと、きちんと、球投げてきたわ。キャッチボール上手だわ……。そしてやはり森崎博之はあざとい……やることが、ナックスにやらせることがあざとい……好き……。森崎さんの描く大泉さんは世界一かっこいいし、安田さんはピンスポ浴びて長ゼリフの大山場をやり切る切り札だし、戸次さんはとびきりみんなに愛されるひとで、音尾さんは要の存在なのだ。あざとい。だってナックスのことが好きなみんなは、このナックス好きでしょー??って感じ。たまらん。メガ盛りでやっちゃうとこたまらん。これは、森崎博之の、チームナックスへのラブレターよね。悪童の打ち上げで、安田さんに叱られたっていうあれ*3への返事ですよ。チームナックスが大好きな森崎博之が、チームナックスが大好きな我々に向けて、真っ向から挑んでくるってのが、正々堂々のあざとさなんだよな……。それでいて、一見に疎外感を与える楽屋オチっぽさも薄いと思う。好きしかない……。

なにより、この題材を扱うにあたって、変な色ついてない話を、スコーンとまっすぐ投げられるの、めちゃくちゃすごくないかしら。右にも左にも寄ってねえ。思想は纏わないけど、意志がむちゃむちゃ強い。あの土地にまとわりついてる思想に振り回されない。右も左も、反戦非戦平和の祈りも、恨みも呪いも感じない。生きて死ぬ、そしてそれを知って生きる。それだけの話が強い。わたし最近、すぐ泣くし、泣くと震えるんですけど、カテコになってもめっちゃ震えてたわ……。生きて死ぬ物語って、わたしを殴る力がむちゃくちゃ強い。タイトルになってる島の名前も知らずに観てほしいというのは、まっすぐ投げてきたものを、まっすぐ受け止められるようになのかな。ここも、キャッチボールだよな。これ、普通なら、90分、幕間20分、60分の、3時間の芝居になるような分量じゃないかなーと思うけど、これをナックスの2時間にぎゅっとしてあるのが、また強い。余談ですけど、チームナックスの公演時間2時間という縛り、とても好きです。やっぱり観やすいよなあ、2時間の一幕芝居。しかし結局、くっそ長いカテコで台無しになるのを、なんとかしてほしいw わたしが観た初日は、本編2時間・カテコ10分と、帰りの時間がタイトだった突発弾丸日帰りのわたしにも優しい公演時間だったのだが、いまもう徐々に伸びてるっぽいな!?www 話を戻して、この話で、2時間しかないのが、食い足りないと思うひともいるだろうなあ。が、3時間作れるものを、2時間の分量におさめることによる圧と、森崎演出のテンポ感の相性めっちゃいいと思う。こういうの、最近の流行なのかなあ。この3年の間に、キンプリやハイローを愛好していたので、ちょっと思わんでもない。森崎演出と、キンプリと、ハイローから感じるもの、近いんだなあという気づき。と、前述の友人にこの話をしたら、「いまさら気づいた!?」と言われたので、わたしだけ気づいてなかったんかもしれない……。作中、チームナックスの姿を、登場人物たちの来世として語らせたりと、この物語と、チームナックス自身の物語が重なるように感じるメタ視点の盛り込み方が半端ないのが、また強い。北の果てを語ることの意義を、北海道を背負い続けるチームナックスの演目としての重みにかえてるの、やはりあざとくメタい。前述の、キャスティングのあざとさが、このメタ視点を補強してくるんだよなあ。

つまらないことをうだうだ書いてしまった気がするが、とにかく良かった……。生きて死ぬ強い話、とても良かった。各キャラクターへの思い入れとか、まだそういうのには到達できていない。なんなら名前もうろい(パンフレットに載ってるかなーと思うが、次あたり買います)。安田顕にお花! 安田顕に白いかわいいお花! 安田顕に白いかわいい可憐なお花! 最高かよ!!! 知ってたー!!!! くらいしか考えてない。

あと、まあ、さくっと軽めのことを、箇条書きで。

  • とにかく回るセットが好き(好きという問題なので、理由はないと思う。いいとか悪いとかではない。好き)なので、このセット好き……
  • 戦車含め、いろんなものについてるたぶんセット転換用の目印のLED(かな?)を、暗の中で星空に見立ててるの、もうもうむっちゃ好き
  • 戦車に咲き乱れる花なんてほんとあざといんだけど、あれ実際の光景なんだろうなあ。
  • 教科書には載ってなさげな占守島の戦いには詳しくなくていいけど、ガダルカナルとか満州とかポツダム宣言とか、教科書に絶対載ってることについてはちゃんと知ってなきゃいけない気がする。ちゃんと知ってるかと言われると自信ないので、もうちょっと勉強はしたい。
  • まだ諸々勉強してないです。もっかい観たあたりからなんか学ぶかなあ。パンフレットもまだ買ってないが、参考文献リスト載ってるかなー。
  • ちょっと検索したこととしては、チングルマって、別にアイヌ語じゃないんだな……
  • 占守島、シュムシュ島。幌筵島、ポロムシル島。公演前からファンの通称は「ぱらむしる」だった気がするし、ちょっと検索してもそう読むっぽいが、作中は「ぽろむしる」って発音してたと思う。聞き違い?
  • シュムシュの話だなあと思ったが、死守しようとしてたのが、幌筵海峡だから、このタイトルでいいのか。
  • 序盤、車椅子の動かないさくらばが出てくるとこ、あれあまりに安田さんがまばたきしないので、むちゃくちゃ気になったが、さくらばは、ガダルカナル帰りだからかしら……ガ島は、まばたきをしなくなったものは、明日死ぬって言われたところ……。
  • ラスト、50年後を額面どおりに受け取ると、1995年。たなかの息子を抱きしめる約束を果たし、みずしま軍曹の言うとおりちゃんと泣けて、紗幕の向こうの仲間たちに会えた。つまり遠からずさくらばも死ぬけど、翌1996年はご存知チームナックス結成の年なんだよな。メタい……。
  • チャップリン云々とか、もうさっぱり記憶が薄いんですが、引用されてたのはモダンタイムスだと、ともだちに教えてもらった。

そして、続く→ TEAM NACS 第16回公演「PARAMUSHIR〜信じ続けた士魂の旗を掲げて」愛知 - かくれが

*1:http://d.hatena.ne.jp/refuge/20121226/1356523882

*2:http://d.hatena.ne.jp/refuge/20150727/1437985857

*3:いま、ささっと出典が思い出せない。あちこちで話してるとは思うんだが。